大阪地方裁判所 平成2年(わ)751号 判決 1990年11月01日
国籍
韓国(慶尚南道宜寧郡龍徳面召湘里九三〇番地の一)
住居
大阪市大正区三軒家西三丁目四番一六号
人夫供給業兼金融業
神本信潤こと
姜信允
一九四五年九月二〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官梶山雅信出席の上審理し、次のとおり判抉する。
主文
被告人を懲役一年一〇月及び罰金六、〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪市浪速区久保吉一丁目一番二八号において、人夫供給業「神本組工業」等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て
第一 昭和六〇年分の総所得金額が七四四八万一五八四円(別紙<1>総所得金額計算書並びに同<2>及び<3>各修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、事業に係る実際の所得金額とは関係なく、ことさら過少な所得金額を記載した内容虚偽の所得税確定申告書を作成した上、同六一年三月一五日、大阪市港区磯路三丁目二〇番一一号所在の所轄港税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一四一〇万円で、これに対する所得税額が二八七万一三〇〇円である旨の右所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて、不正の行為により、正規の所得税額三八〇八万七〇〇円と右申告税額との差額三五二〇万九四〇〇円(別紙<10>税額計算書参照)を免れ
第二 昭和六一年分の所得金額が一億五七九五万九四九五円(別紙<4>総所得金額計算書並びに同<5>及び<6>各修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、前同様の所得税確定申告書を作成した上、同六二年三月一六日(日曜日である三月一五日の翌日)、前記港税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一五七八万八八七七円で、これに対する所得税額が三五八万六七〇〇円である旨の右所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて、不正の行為により、正規の所得税額九六〇五万六四〇〇円と右申告税額との差額九二四六万九七〇〇円(別紙<10>税額計算書参照)を免れ
第三 昭和六二年分の所得金額が二億九七八万六八〇円(別紙<7>総所得金額計算書並びに同<8>及び<9>各修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、前同様の所得税確定申告書を作成した上、同六三年三月一四日、前記港税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一九五七万一二二六円で、これに対する所得税額が五二一万八〇〇〇円(ただし、申告書には誤つて五一六万一五〇〇円と記載)である旨の右所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて、不正の行為により、正規の所得税額一億一六〇〇万六一〇〇円と右申告税額との差額一億一〇七八万八一〇〇円(別紙<10>税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書一三通
一 櫛谷建司の検察官に対する供述調書
一 収税官吏作成の森保徳明、三輪千代子、神本洋子こと鄭洋子(検察官請求分証拠等関係カード番号71から76、79から82。以下、括弧中の算用数字は、同カード中の番号を示す。)、櫛谷建司(四通)、武林孝次(三通)、有田良樹及び有田ヤエコに対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書四五通(7から18、21、27、29、31から41、45から50、52から56、58、60から62、64から66、68)
一 検察事務官作成の捜査報告書
判示第一及び第二の各事実について
一 収税官吏作成の神本洋子こと鄭洋子(77)に対する質問てん末書
判示第一の事実について
一 収税官吏作成の長谷部武志及び中山正明こと崔炳煥に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書五通(22、30、42、44、67)
一 港税務署長作成の証明書(4)
判示第二及び第三の各事実について
一 収税官吏作成の山本富美枝こと金富美及び岡本哲夫に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書三通(19、20、28)
判示第二の事実について
一 収税官吏作成の査察官調査書三通(26、43、59)
一 港税務署長作成の証明書(5)
判示第三の事実について
一 収税官吏作成の神本洋子こと鄭洋子(78)及び升谷博一に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書六通(23から25、53、57、63)
一 港税務署長作成の証明書(6)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、所定の懲役刑と罰金刑を併科し、なお罰金額について同条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年一〇月及び罰金六〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 的場純男)
別紙<1>
総所得金額計算書
神本信潤こと 姜信允
昭和60年1月1日
昭和60年12月31日
<省略>
別紙<2>
修正貸借対照表
(事業所得)
昭和60年1月1日
昭和60年12月31日
<省略>
別紙<3>
修正貸借対照表
昭和60年1月1日
昭和60年12月31日
<省略>
別紙<4>
総所得金額計算書
神本信潤こと 姜信允
昭和61年1月1日
昭和61年12月31日
<省略>
別紙<5>
修正貸借対照表
(事業所得)
昭和61年1月1日
昭和61年12月31日
<省略>
別紙<6>
修正貸借対照表
昭和61年1月1日
昭和61年12月31日
<省略>
別紙<7>
総所得金額計算書
神本信潤こと 姜信允
昭和62年1月1日
昭和62年12月31日
<省略>
別紙<8>
修正貸借対照表
(事業所得)
昭和62年1月1日
昭和62年12月31日
<省略>
別紙<7>
修正貸借対照表
昭和62年1月1日
昭和62年12月31日
<省略>
別紙<10>
税額計算書
神本信潤こと 姜信允
<省略>